手元のキャッシュは25兆円
アップルの決算からは、多くの事がわかります。その中で一際注目を集めているのは、アップルの手元にある現金・キャッシュです。
2019年1-3月期の決算では、アップルは25兆円($225B)の現金を保有していることがわかりました。前回の2018年9-12月期の27兆円($245B)に比べれば減少したものの、依然として高水準を保っています。
この高水準なキャッシュの使い道ですが、直近のアップルのアップルの主な投資を振り返ると、新規事業をはじめとして、主に以下の3つの用途に使われていることがわかります。
- 動画配信サービスなどの新規事業投資
- 人材獲得と製品・サービス獲得のための買収
- 新拠点開設や雇用創出による米経済への寄与
- 配当と自社株買いを通じた株主へ利益還元
2019年リリースの新サービスへの投資
アップルは2019年に立て続けに新サービスを発表しています。米投資銀行のゴールドマン・サックスと共同でクレジットカードのApple Cardの提供を開始するだけでなく、Apple News+(ニュース・雑誌読み放題)、Apple Arcade(ゲーム定額制プラン),Apple TV+(Appleオリジナル動画のストリーミングサービス)の3つの新規サブスクリプションビジネスを発表しています。
アップル、本日動画サービス・ニュースサービス・クレジットカード発表へ。
この中でも、特に、この秋からアメリカなどの主要な国でサービスが開始されるオリジナルコンテンツ動画配信のApple TV+には継続的に投資が必要とされています。
Amazonは先日、動画・音楽のコンテンツに年間70億ドル(約7,700億円)ペースで投資をしていることが公になりましたが、アップルもApple TV+ともともとのApple Musicをあわせた額で同程度の金額を今後毎年継続的に投資することになりそうです。
人材と製品サービス獲得のための買収
アップルのティム・クックCEOは、2019年にアップルに必要な全てを獲得するために、戦略的に買収を行っていることを発表し、なおかつそのペースは2-3週間に1社にもなることを明かしています。
代表的な買収は2014年、ヘッドフォンで有名なBeatsを買収して、定額制音楽配信のBeats Musicを取得して翌年にApple Musicとしてリリースした例がありますが、2018年後半から2019年にかけての半年間でも20-25社の戦略的な買収を行ったと公言しています、
オースティンでの新オフィス開設等による米国経済への3500億ドルの寄与
トランプ政権が企業のアメリカ国内の雇用創出を望む強い声に応えて、Amazonなどの大企業が積極的にアメリカ国内雇用の創出を発表していますが、アップルも新規オフィス建設や従業員拡大を含む大規模な雇用創出策を公表しています。
アップルは2018年年末にテキサス州オースティン市の同社を拠点を大幅に拡張すると発表しました。オースティン市の拠点では既に6200人が働いていますが、既存の拠点の近くに新社屋を建設し、さらに拠点開設時には5,000人を雇用を増やします。また、最終的には新拠点で15,000人を雇うようです。
15,000人が新拠点で働くようになると、Appleはオースティン市で最大の雇用主になると言います。
また、アップルはオースティン以外にもシアトル、サンディエゴ、カリフォルニア州カルバーシティにも新拠点を建設予定で、各地で1000名を雇用し、計画全てを実行することでアメリカ経済に5年間で3,500億ドル(38兆円)の経済効果をもたらすと試算しています。
配当と自社株買いの増額
最後の主な現金の用途は、アップルのオーナーである株主に対する配当金と自社株買い戻しです。自社株買い戻しとは、キャッシュを使ってアップル株を買って株価を支えることで、株主に利益を還元する方法です。
配当金と自社株買いの総額は、規模としてもかなりの大きさがありますが、それだけでなく年々増加傾向にあります。2017年度の344億ドル(3.7兆円)に対して、2018年は742億ドル(8.1兆円)に急増し、2019年は750億ドル(8.2兆円)と高水準を維持しています。