【解説記事】米バーガーキング、コーヒー定額制ビジネスは好手か悪手か。

ハンバーガーチェーン店バーガーキングは、アメリカ国内で新しいコーヒー定額制サービスを3月15日に開始しました。1ヶ月定額制でサービスを提供するサブスクリプション・ビジネスは近年IT企業を中心に流行っていますが、IT企業の枠を超えて有名ハンバーガーチェーン店も導入したことに、注目が集まっています。

このバーガーキングが打ち出したコーヒー定額制サービスはビジネス戦術として、良い打ち手と言えるのでしょうか。

結論をいうと、バーガーキングにとってコーヒー定額制は最良の手ではないが、ライバルが同じサービスを始める前に顧客を少しでも囲える先行者利益を得られるまずまずな打ち手だったと考えています。

そう考える理由を、今回のコーヒー定額制の取り組み内容、背景とともに解説します。

バーガーキングが打ち出した月額5ドルのコーヒー定額制サービス

バーガーキングアプリから1ヶ月5ドルのBKカフェ・コーヒーサブスクリプションに加入すれば、1ヶ月間毎日スモールサイズのコーヒーを注文できる制度です。

バーガーキングの広告では、「スターバックスの一杯のラージサイズ(Lサイズ)のカプチーノの価格で、1ヶ月間のコーヒーを」とうたい、ライバルのターゲットをスターバックスに置いているようです。

北米バーガーキングを率いるクリス・フィナッゾは「バーガーキングは絶えずテクノロジーを活用し、ショップ内での顧客体験を磨きをかけている。たった5ドルで1ヶ月コーヒーが飲めるサービスには自信を持っている」と語っています。


NEWS CARAVANの視点:流行るサブスクリプション・ビジネスとその難しさ


今回のバーガーキングのコーヒー定額制サービスの背景には、2つの重要な点があります。1つはアメリカ国内の朝食を巡る戦い、そしてもう1つのほうがより重要ですが、定額制ビジネスの流行です。

メニューを超えて活発化する朝食を巡る戦い

かつてフードチェーン店は、バーガーキングであればライバルはマクドナルドというように同じハンバーガーショップ内でライバルが限られていましたが、アメリカでは今、メニューの壁を超えてフードチェーン店による朝食を巡る戦いが激しさを増しています。

たとえば、長い間アメリカの朝食市場でトップを走ってきたマクドナルドを見てみると、近年ライバル競合が朝食メニューを強化したことでシェアを減らしていることを受けて、2月20日にアメリカのマクドナルドで朝食限定の新メニュー、ドーナッツ・スティックを発売しました。ハンバーガーの枠を超えて、マクドナルドが打ち出した新商品はドーナッツショップのダンキンの朝食市場に大きな影響を与えています。

バーガーキングのコーヒー定額制は好手ではない理由

こうした背景の中で、今回バーガーキングはハンバーガーではなくコーヒーの定額制サービスを開始して、スターバックスをライバルと公言しています。

NEWS CARVANの見解では、バーガーキングの定額制コーヒービジネスの提供は、ビジネス戦術として悪手とは言わないまでも、決していい手ではないと考えています。

近年のビジネスを見るに、サブスクリプションの成功の秘訣は、提供商品がライバル企業が真似できない商品であることが必須と考えているからです。

マイクロソフトもアドビも差別化ができるサービスで成功した

サブスクリプションビジネスの成功例は、Word、Excel、Powerpointのビジネスソフトで世界中で圧倒的なシェアを持つマイクロソフトのofficeの定額制サービスと、デザイナー向けソフトで圧倒的なシェアを持つアドビのデザインソフトcreative cloudの定額制サービスに見ることができます。

この2つの例に共通するのは、提供するサービスがどちらもライバル会社では代用ができない差別化された商品を提供している点です。(ある会社だけ突然、Officeを止めて、別ソフトしか使えなくなったら仕事になりません。)

その一方で、提供するサービスがライバルと似通うサブスクリプションは、会員数獲得競争を招くことになります。

動画配信サービスのネットフリックスや、アマゾンプライムビデオがオリジナルコンテンツにこだわるのは、他社には真似できない差別化要因が欲しいからです。

バーガーキングのコーヒーは、独自性を発揮できる商品ではなく、たとえばマクドナルドも同様なサービスを始めた場合には、価格競争に陥り、利益を圧迫する可能性があります。これがバーガーキングのコーヒー定額制が良い戦術とは言えない理由です。

しかし、バーガーキングがコーヒー定額制を始めなくとも、いずれどこかのライバル企業が取り組むことは簡単に想像できます。そこで、先手を打って顧客を増やしておこうという狙いは正しいです。これが悪手とも言えない理由です。

まとめると、バーガーキングにとってコーヒーサブスクリプションビジネスは、今後他社も簡単に真似できるサービスで会員数獲得競争におちいる可能性が高く、ビジネス戦術上で手放しで良い打ち手とはいえませんが、結局遅かれ早かれ会員獲得競争に飲み込まれるなら、先手を打てた点でメリットがあると言えます。