【事例】JAL・アクセンチュア、AIを活用した空港業務支援システムを羽田・成田で試験導入

JALはチェックインカウンターでの手荷物に関する質問や、座席アップグレード手配など多岐にわたる問い合わせにリアルタイムで必要な情報をタブレットで提示するAI搭載システムを試験導入することを発表しました。

3月末まで羽田・成田で試験的に導入し、システムの有効だったかどうかを評価したのちに、両空港での本格導入を検討する見込みです。

この記事は、これから社内にAIを導入しようとしているビジネスマン・ビジネスウーマンに向けて、JALのAI導入の取組内容の紹介と共に、この事例で工夫しているAI導入時のポイントを解説します。

チェックインカウンタでの搭乗客からの多岐にわたる質問

JALは2020年に向けた“一歩先行く価値”をテーマに、ITを使った新たな価値の提供に挑戦しています。スタッフの数が限られる状況でも、より多くの旅行客に対応するため、空港業務は自動化や搭乗客によるセルフ化が進む中、チェックインカウンタでの業務改善に焦点が当てられたのが、今回の取り組みです。

チェックインカウンターでは、乗り継ぎ便を利用する搭乗者からの手荷物問い合わせや、座席アップグレードの要望、目的地の空港ラウンジ案内など、多岐にわたる問い合わせ対応が求められます。こうした問い合わせに対して、以下の課題がありました。

  • チェックインシステムとは別PCでの検索や紙の資料の参照に時間をかけ、搭乗客をお待たせしていた。
  • 空港スタッフによる質問の回答の質に差があり、十分なご案内ができていない場合があった。
  • 口頭での回答が中心となり、搭乗客にわかりやすく案内ができていない場合があった。

そこでJALはアクセンチュアと共に、搭乗客からの質問に対して、スピーディにわかりやすく回答ができるシステムの開発に取り組みました。

会話の中を聞き取り、必要な情報を表示するタブレット

JALとアクセンチュアは、AIが空港スタッフの会話だけを聞き分けて検知し、スタッフの発言内容に沿った必要な情報を即座にタブレットに表示するシステムを開発しました。

先程のデモ動画では、搭乗客とスタッフの間で「ビジネスクラスの座席がどのようなものか」話し合われていることを検知し、写真付きでビジネスクラスの席を魅力的に伝えて、座席アップグレードにつなげている様子が見て取れます。

アクセンチュアのAI HUBで最適なAIを適用

今回のシステム構築では、アクセンチュアが保有するシステム「AI HUB」が採用されたようです。AI HUBは複数のクラウドに接続して各クラウドのAI機能を呼び出すことを可能にするAIプラットフォームです。これにより今回のJALシステムでは、「空港スタッフの声の判定」・「会話内容の特定」・「タブレットに表示スべき内容の判定」至るまで、複数社のAI機能をAI HUBで最適に組み合わせて実現することができたと言います。

期待効果

今回の取り組みによって、次の効果が期待できるとみられています。
・スタッフの声から判断した答えを瞬時にタブレットに表示でき、搭乗客を待たせる時間が大幅に短縮
・搭乗客とスタッフのコミュニケーションがスムーズになり、顧客満足度・従業員満足度が向上

出典:JAL、アクセンチュアと協力し、人工知能を活用した空港旅客サービスシステムを試験導入


NEWS CARAVANの視点:マルチ・クラウドの組み合わせは今後のトレンド


今回のJALの取り組みのポイントは、複数会社から提供されるAI機能を活用できるシステムにしていることです。その具体的な方法としてAI HUBというアクセンチュアのシステムが採用されたわけですが、このような複数社AIを組み合わせるメリットは主に2つあります。

  • 各社のAI機能の良いところを、良いとこ取りできる。
  • データをAI HUB上の1ヶ所に蓄積することで、データ分析に活かせる。

各社のAI機能の良いとこ取り

AIやクラウドに詳しい方ならご存知かもしれませんが、AI機能のそのほとんどがクラウドで提供されており、各クラウド提供企業によって、特色がわずかに異なります。

たとえば、Googleクラウドが提供するAIは音声を文字に変換する精度が非常に高く、またAmazonのクラウドで提供されるAIでは、Amazonのサイト内部で使われているおすすめ商品案内と同じものが使えるなど、各社に特長があります。

このように各社の提供機能が異なる中で1社のクラウド上にシステムを作ると決め打つのではなく、AI機能を呼び出すシステム(事例のAI HUB)を採用し、そこから適材適所AI機能を呼び出すことで、「最適なAIの組み合わせ」ができるようにしてる点が、JALの工夫のポイントです。

システムを作る段階からデータを貯める場所を確保する

また、AIを呼び出すシステムを用意することは、後々のデータ分析のことを考えてもメリットがあります。複数クラウドを使った場合には、データがバラバラに蓄積されて分析できなくなる問題がありますが、AIを呼び出すAI HUBのようなシステムにデータを集約する場所を用意すれば、この問題を解決できるからです。

たとえば、日本よりもシステムのクラウド化で先行するアメリカでは、システムを1社のクラウドで構築するのではなく、2社以上のクラウドを採用してシステムを構築する動き(マルチクラウド化)が盛んです。

これは、1社のクラウドがダウンしても、2社目が残っていれば業務を停止せずに済むメリットがありますが、2社のクラウドを使用していると問題になるのは、データが各クラウド上に点在してしまい、どこかで1度まとめない限り、データ分析ができなくなることです。

近年は、商品の発注数もデータ分析に頼るなどデータが命とも言われています。2社以上のクラウドの機能を使えば、データをまとめる手間が生じる問題を、JALではAI HUBを用いてデータが蓄積される場所をAI HUB上に置くことも可能にしています。

AIをより賢くするためにもデータが大変重要になるのですが、そのためのデータをAI HUBなどのデータ集約できる場所をあらかじめ備えてから、システム構築をしている点は先見性あるAI導入の仕方だと言えます。

最後に、アメリカの多くの企業がこれからマルチクラウド化すると見られており、こうした場合に「データをどこに蓄えるか」が重要な課題になりつつあることを付け加えておきます。

データ蓄積ニーズにいち早く製品・サービスを用意したIT企業はアクセンチュアとIBMで、アクセンチュアは事例にもあげたAI HUBです。そして、IBMは下記参考記事でもあげたように、データ蓄積製品を戦略的にアピールし始めたのは特筆に値する動きです。

<参考記事>

【解説記事】なぜIBMは、Watson AIを他社クラウドに解放したのか。