Google傘下のWaymo、商用自動運転車を目指した10年の軌跡。

ずっと昔から人々は、自動車を無人で運転する夢を抱いてきました。その長年の夢を現実のものにし、2018年に初めて自動運転を使った配車サービスを商用展開したのがWaymo(ウェイモ)です。

Googleの親会社のアルファベットの傘下でWaymoは、前身のGoogle自動運転プロジェクトから10年もの歳月をかけてようやく、その技術を実用化させつつあります。この記事では、その10年間に渡る自動運転の取り組みと軌跡を紹介します。

12人で始めたGoogle自動運転プロジェクト

Googleで自動運転のプロジェクトが始まる少し前、軍用の新技術開発を進めるDARPA(国防高等研究計画局)が主催した2005年グランド·チャレンジというロボットカーレースから始まります。

DARPAが防衛上の先進的な課題を解決するための取り組みとして、従来の枠組にとらわれない手法を求めて開催した自動運転ロボットレースで、スタンフォード大学のスランが率いるチームが優勝。そして、自動運転の実現をいち早く現実のものとして認識し始めたGoogleは、他社に先駆けて、自動運転開発プロジェクトをスタートさせます。

この大会で優勝したスランに目をつけてプロジェクトチームに引き入れ、Googleストリートビューの発明者と共に、総勢12人のGoogle自動運転開発チームを牽引させました。

「自動運転で自動車死亡事故をなくしたいという熱意が、私達を突き動かしていた」と、現在Waymo CTOを務めるDmitri Dolgov氏はプロジェクト初期を振り返ります。世界中で130万人が交通事故で亡くなっており、その94%の原因は不注意や居眠り、飲酒運転など人為的なミスだと言われており、自動運転が完成した時に、世の中に与えるインパクトはとても大きなものでした。

Waymo CTO Dmitri Dolgov氏(画面左側)

このプロジェクト当初の信念は、現在のWaymoの技術にも受け継がれています。Waymoの車は、自動運転で複数の走行パターンが考えられる状況でもっとも安全な走行パターンを選択するだけでなく、安全な走行に差し障りがある状況と判断した場合には、すぐに減速して路肩に停止し、事故を未然に防ぐ工夫がほどこされています。

開発初期の2つの目標

Googleは開発初期に2つの目標を立ていました。1つ目の目標は、自動走行で合計100万マイル(160万キロ)を走行することでした。DARPA主催の2004年の第1回ロボットレースでは、1位の車でも11kmしか自動走行できなかったことを踏まえると途方もない数字で、当時誰もなし得ていませんでした。

そして2つ目は、100マイル(160キロ)ずつのさまざまな道路環境の10個ルートすべてを自動走行で走り切ることでした。10のルートは、郊外や、高速道路、密集した都市部などの多様な場所に加えて、同じ道路でも時間帯・天候などさまざまな環境で走行ができることを目標にしました。

この10のルートには、急斜面と急カーブで悪名高いサンフランシスコのロンバート・ストリートも含まれています。

ロンバートストリート

そして、この2つの目標は2年弱かかりましたが無事に達成し、自動運転開発は次の段階に進むことになります。

ハンドルもペダルもない車での走行

自動運転の次の段階は、運転中に人が全く手を加えない完全自動運転の実現でした。そのために、ハンドルもペダルもない車を特注で作り、2015年に初めてこの車で、公道での走行実験を行います。

初めての完全自動運転車に乗車したのはスティーブという名の男性でした。この乗車に選ばれた一般男性でしたが、多く人と違う点があるとすれば、スティーブは視覚障害者で目が見えませんでした。

追跡者も、警察の護衛も、テスト用のドライバも搭乗せずにスティーブ独り載せたWaymoの車は、病院から地元の公園まで事故なく、完全自動運転を成功させました。

スティーブを載せた完全自動運転の様子は、Youtubeでも公開されています。以下の動画で開始30秒から登場する男性がスティーブです。

「今まで一度もオースティンまで行けたことはなかったが、今こうしてオースティンまで運転していると」というスティーブの発言が印象的です。

そしてこの完全自動走行実験の翌年、2016年にGoogleの自動運転開発部門は、スピンオフしてグーグルの親会社アルファベットの傘下で、Waymoという1つの会社として活動を始めます。

自動運転の商用展開に向けて加速化するWaymoの開発

1つの会社としてGoogleから独立したWaymoは、開発を加速させていきます。2017年からドライバーレスモードでのテスト走行距離を伸ばし、2018年末には地域限定ながら、世界で初めての自動運転タクシー配車サービスWaymo Oneを開始しました。

さらに2019年に入ると、ナビガント・リサーチ社の調査での自動運転企業ランキングで1位に輝き、また自動運転開発拠点を拡大して車の生産能力を2倍に上げるなど、他社を突き放しにかかっています。

Googleの自動運転Waymo、新センター開設で生産能力を2倍に。

また、自動運転の安全性の鍵をにぎるセンサー(LiDAR:読み方は「ライダー」)を他社に販売して、自動運転の部品供給でも市場シェアを取りつつ、センサーの大量生産をして単価を引き下げようとするなど、商用販売に向けて車の製造費用の低価格化を図る動きをみせています。

グーグル自動運転Waymo、自動運転の鍵を握るセンサーを発売へ。

自動運転の状況判断の難しさ、それを克服したGoogle Brainの人工知能

自動運転の実現に向けて、Waymoは数々の難しい課題に直面しては、それを乗り越えてきました。そして、その問題の解決に大きな貢献をしたのがGoogleの人工知能技術でした。

例えば、人が運転する車が赤信号を無視するなどの交通ルールを無視してきた場合でも、自動運転が減速して衝突を防ぐために、交差点への進入速度から信号無視を予測する必要がありました。

また、通常であれば信号に従って運転すべきところを、交通整理の警察官がいる場合は、警察官のジェスチャーを理解して信号の指示を無視するなどの、実際の人間のドライバーに限りなく近い状況判断ができなければなりませんでした。

これらの高度な予測や状況判断に、Google Brainと呼ばれるGoogleの人工知能の専門の知見が適用されています。高度な人工知能を駆使した結果、ごく短期間で得られたパフォーマンスの量は驚くべき結果が現れ、予測や判断のエラー率は100分の1に低下したそうです。

こうして自動運転システムが出来上がるにつれて、車同士の情報連携が可能になり、より安全な走行が可能になるケースもありました。例えば、ある自動運転車が道路上の1つの車線が工事で埋まっていることを検知して、工事現場を避けるように車線変更して走行した場合、同じ道路に侵入してきた別の自動運転車は、視界にはまだ見えない工事現場が見えないにも関わらず、前の車が検知した工事現場の情報を元に、予め工事現場のある車両を避けて走行することができます。

自動運転車が走行しながら吸い上げる道路状況のデータを蓄積して、自動運転車が数多く走れば走るほど安全な走行ができるシステムをWaymoは開発していきました。

車を作っているのではなく、ドライバーを作っている

Waymo CTOのDmitri氏は、2019年3月のMITテクノロジーレビュー主催のEmTech Digitalで、Waymoは車を作っているのではなく、ドライバーを作っている感覚に近いと言います。

優秀なドライバーさえ作ることができたら、タクシーの配車サービス、無人の配達車、個人向け自動運転車の製造販売など様々な事業に展開を見据えているようです。

12人から始まったGoogleのプロジェクトが10年かけて実を結び、これからの世界を変えようとしています。今後のWaymoの活躍にも目が離せません。

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