宇宙からデータを受信する、アマゾンのAWS Ground Stationは何が凄いのか。

2019年4月、アマゾンは3,000個のもの人工衛星を打ち上げ、それらを使った高速な衛星インターネット網を構築する計画を発表しました。

アマゾン、3,000個の人工衛星で衛星インターネット環境を構築へ。

We are socialによると2019年時点で世界人口77億人のうち、インターネット利用人口は44億人と言われており、インターネットを利用できていない人々が世界には33億人もいます。アマゾンはこうした人々にネット環境を提供し、アマゾンのネットサービス利用者を拡大させたい狙いです。

また、アマゾンは人工衛星の発表に先駆けて2018年11月に、人工衛星からのデータを受信するクラウドサービスAWS Ground Stationを展開するなど、少しずつ宇宙ビジネスへと領域を広げつつあります。

しかし、衛星インターネットのメリットはまだしも、普段からクラウドサービスや人工衛星に触れない人々には、AWS Ground Stationの良さが分かりにくいかと思います。この記事では、人工衛星のデータ受信の課題が抱えている課題と、AWS Ground Stationがどんな解決策を提供してくれるかを説明したいと思います。

人工衛星からのデータ受信コストの課題

現在、地球の周りには数千もの人工衛星が飛んでいます。近年は技術革新で人工衛星の低コスト化と小型化が進んでいるため、数十kgの小型衛星のマイクロサット、それ以上に小さい数kgナノサット、そしてわずか数100gのピコサットと呼ばれる小型衛星も多数飛ぶようになりました。

小型化と低コスト化で人工衛星が打ち上げやすくなったことで、さまざまな組織・企業が参画し、人工衛星の用途も多様化しました。現在では、地表観測から位置情報取得、テレビ配信、通信ネットワーク構築まで、多種多様な大量のデータを人工衛星を使って取得するようになりました。

しかし、取得したデータを地球に送信するには依然としてコストがかかる問題がありました。人工衛星をつかった大規模なプロジェクトでは、億を超える費用をかけて、人工衛星のデータを受信するための自前の地上局を構築・運用したり、小規模なプロジェクトであっても既存の地上局を利用する際に長期契約に縛られて、費用がかさむことが少なくありませんでした。

AWS Graound Stationは安価にデータ受信局を提供するサービス

この問題に目をつけたアマゾンは、かつて自分たちがクラウドビジネスを始めた時と同じ状況が起こっていることに気づきました。

以前までの大企業は、億単位の高額なコンピュータを購入する必要がありましたが、アマゾンが保有する大型コンピュータをインターネット経由で提供するクラウドサービスを始めたことによって、大企業は1度に巨額の請求されることなく、アマゾンのクラウドを使った分だけ支払えば良くなりました。

これにより、初期費用が抑えられ新しい技術を積極的に試せるようになったのです。

2018年11月に発表されたAWS Ground Stationというサービスは、クラウド黎明期にアマゾンがやったことをそのまま人工衛星ビジネスに適用したものでした。つまり、人工衛星データ受信用の高額な地上局はアマゾンが保有し、ユーザはデータ受信にアマゾンの地上局を使用した分だけ支払うことで、初期費用を抑えられるサービス(AWS Ground Station)をはじめました。

衛星のデータ受信コストが下がれば、衛星ビジネスを始める企業も増えて、新たな挑戦が数く行われるようになるため、人工衛星や宇宙開発の速度があがります。かねてから宇宙ビジネスを手がけていた業界人がAWS Ground Stationを絶賛したのは、そのためでした。

また、宇宙開発が盛んになればなるほど、アマゾンのサービス売上が増える仕組みも巧妙にほどこされています。

なお、2018年11月のサービス提供開始時点はアマゾンは2つの地上局しか保有していませんでしたが、2019年中にその数を12局に増やすと公表されています。

アマゾンにとって、基地局をクラウドで提供する意味

AWS Ground Stationはアマゾンのクラウド上で展開されているサービスだという点も、アマゾンにとって大きな意味を持っています。

人工衛星からのデータをアマゾンが運営する地上局で受信し、そのデータをインターネット経由(アマゾンのクラウドAWS上)でユーザが受け取れるようにしたため、ユーザのデータは必然的にアマゾンのクラウド上に蓄積されます。

衛星から受信したデータは、様々なデータ処理をして解析にかけますが、アマゾンのクラウド上にデータが存在する以上、データ処理も解析もアマゾンのクラウド上で行われる可能性が極めて高くなります。アマゾンは、ユーザが衛星を打ち上げれば打ち上げるほど、アマゾンのクラウド利用料(売上)が増える仕組みを構築したのです。

まとめ

AWS Ground Stationは人工衛星のデータ受信に必要な地上局をアマゾンが提供するサービスです。ユーザにとっては費用が高かった地上局の初期構築費を抑えられて、新たな開発や挑戦がしやすくなり、またアマゾンとしては宇宙ビジネスの波に乗って、自社のクラウドビジネスの拡大させる狙いが巧妙に仕組まれていたサービスだといえます。